435人が本棚に入れています
本棚に追加
初めての口づけ
(そんなっ……無理でございますっ)
ときめきと緊張に耐えられず、シャーロットはぎゅっと目を瞑{つぶ}った。
(オリヴァーさま……!)
その時だった。むにゅ、と唇に何か暖かいものが触れた。とても柔らかくて、まるでマシュマロのようである。表面は乾いていて、さらりとしていた。
シャーロットは一瞬何が起きたのか分からなかった。
(え……っ?)
ハッとしてまぶたを開けると、オリヴァーと目が合った。驚くほど長い睫毛{まつげ}に縁取られたエメラルドの瞳が甘く細められている。
(嘘……)
シャーロットは数秒遅れで何が起こっているのかを理解した。彼の賢そうな薄い唇が、自身の唇を覆っているのである。まぎれもない接吻だ。
オリヴァーに一途に恋をしていたシャーロットにとって、初めての口づけだった。
(うそ。キ、ス……されているの……?)
――信じられない……私、オリヴァーさまと、キス、しているの……?
「……すまない。クリームだけではなく、唇まで頂いてしまった」
口づけを解いて、オリヴァーが言った。離れる際にふわっと煙草の香りがする。
「……っ」
あまりの驚きにシャーロットは口がきけなくなってしまった。耳まで紅潮させて、ただ彼の真剣な顔を見ることしか出来ない。
性にうぶな彼女は、もちろん男性とキスをしたことなどない。更に言えば、ずっとオリヴァーに想いを寄せていたので、異性と手を繋いだ経験も皆無である。
そんなシャーロットにとって、いきなりの接吻は衝撃的な出来事だった。その相手が恋い焦がれ続けていたオリヴァーなのである。硬直するのも当たり前だった。
最初のコメントを投稿しよう!