初めての口づけ

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初めての口づけ

(そんなっ……無理でございますっ)  ときめきと緊張に耐えられず、シャーロットはぎゅっと目を瞑{つぶ}った。 (オリヴァーさま……!)  その時だった。むにゅ、と唇に何か暖かいものが触れた。とても柔らかくて、まるでマシュマロのようである。表面は乾いていて、さらりとしていた。  シャーロットは一瞬何が起きたのか分からなかった。 (え……っ?)  ハッとしてまぶたを開けると、オリヴァーと目が合った。驚くほど長い睫毛{まつげ}に縁取られたエメラルドの瞳が甘く細められている。 (嘘……)  シャーロットは数秒遅れで何が起こっているのかを理解した。彼の賢そうな薄い唇が、自身の唇を覆っているのである。まぎれもない接吻だ。  オリヴァーに一途に恋をしていたシャーロットにとって、初めての口づけだった。 (うそ。キ、ス……されているの……?)  ――信じられない……私、オリヴァーさまと、キス、しているの……? 「……すまない。クリームだけではなく、唇まで頂いてしまった」  口づけを解いて、オリヴァーが言った。離れる際にふわっと煙草の香りがする。 「……っ」  あまりの驚きにシャーロットは口がきけなくなってしまった。耳まで紅潮させて、ただ彼の真剣な顔を見ることしか出来ない。  性にうぶな彼女は、もちろん男性とキスをしたことなどない。更に言えば、ずっとオリヴァーに想いを寄せていたので、異性と手を繋いだ経験も皆無である。  そんなシャーロットにとって、いきなりの接吻は衝撃的な出来事だった。その相手が恋い焦がれ続けていたオリヴァーなのである。硬直するのも当たり前だった。
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