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自分の身体で確かめてみると良い
「君が好きだ、シャーロット。お試しではなく、俺の本当の婚約者になってくれないか」
オリヴァーが言った。
「本当の、婚約者……?」
シャーロットは呆然と繰り返す。
(いま、なんて? なんて仰ったの……?)
「大人になった君と出会って、一瞬で恋に落ちてしまったんだ。俺の運命の相手は天使で、ようやく舞い降りたんだと思った。君は素敵だ、シャーロット。外見だけじゃない。中身も優しくて、母性に溢れている。君を幸せにしたい」
「ほ、本気ですか……?」
「嘘を言うような男に見えるか?」
「……っ」
じっと見詰められて、シャーロットは言葉に詰まる。オリヴァーの澄んだ碧の瞳にからかいの色はなかった。
(ほ……本気なんだわ)
シャーロットはごくりと唾を飲む。
(オリヴァー様は私を正式な婚約者にしようとして下さっている)
――これは現実かしら? 私、夢を見ているの……?
「あの、これは、私の都合の良い夢ではありませんか? 私は今眠っていて、魂だけが身体から抜け出てフラフラと……」
とうとうシャーロットは、くるくる目を回しながら、あわあわと意味不明なことを口走った。
「? 何を言っているんだ?」
オリヴァーがきょとんとした顔をする。
「でででで、ですからあの、これは頭の中だけの出来事で……」
「急にどうした、シャーロット」
「まままま、まさかオリヴァー様が私を好きだなんて……。夢としか思えませんので……」
「ほう。そこまで言うなら目を覚まさせてやろうか?」
オリヴァーは意地悪そうにニヤリと笑った。
(え……っ?)
突然オリヴァーがシャーロットを横抱きにして、ベッドに連れて行く。そっとシーツに降ろされて、彼が彼女に覆い被さった。
「夢かどうか、自分の身体で確かめてみると良い」
と、再び彼女の唇を塞ぐ。今度は触れるだけではなく、肉厚な舌が入り込んできた。後頭部を押さえられて、黄金色の髪が乱される。
「待っ……、ん……っ」
シャーロットは小さな掌で、彼の胸板を弱々しく押し返した。しかし口づけは止まずに、優しく彼女の柔らかい舌を絡め取る。
(こんなキス、初めて……)
「……っ、ふ……んぅ……っ」
(私、このまま処女を奪われてしまうのかしら……)
シャーロットは蒼い瞳にいっぱい涙を溜めた。もう二十歳なので、想いの通じ合った男女が何をするかは知っている。しかし知識はあるだけで、実際どうしたらいいのか分からなかった。
(もちろんオリヴァー様ならいいわ。大好きなお方だもの……)
唇をそっと離して、オリヴァーがシャーロットを見詰めた。その碧の瞳に欲望が揺らめいている。
「好きだ、シャーロット。君が欲しい」
彼が囁いた。下腹部がきゅんと疼くような甘いテノールである。
「……はい」
シャーロットはこくりと頷いた。彼女のか弱い笑みを見て、オリヴァーは何を感じたのか、目をスッと細くする。そのまま唇を移動させ、彼女の真っ赤になった耳に口づける。
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