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一緒に朝寝坊しよう
もう何度目か、シャーロットが彼のごつごつした肩を揺すると、ようやく恋人が目を覚ました。ぼうっとした顔をしてこちらを見ている。いつもキリッと引き締められている眉は緩み、碧の瞳がぼんやりとし、薄く開いた唇は、いかにも寝起きといった体だ。
「シャーロット……」
かすれたテノールが響く。
「おはようございます、オリヴァー様。もうお昼ですよ」
彼女はにっこりと笑った。輝くような天使のスマイルである。バターブロンドの髪が陽を浴びてキラキラと光る。頬は赤みを帯び、とても可愛いらしい。
「おはよう……今日もきれいだよ、俺の天使……。ん……もう少し寝ても良いかな……。君の隣だとよく眠れるんだ……」
オリヴァーはむにゃむにゃと目をこする。まるで子供のような仕草である。
(うふふ、オリヴァー様ったら、可愛い)
最近知ったのだが、彼は朝が大の苦手なのだ。任務で僻地に行っている間は常に緊張しているせいで、起きられないということはないそうだ。がしかし自分のベッドだと、それらから解放される反動か、一度眠ったらなかなか目が覚めないのだという。
――でも不思議だな。一人で寝ている時はここまでだらしなくなることは無かったのに……。君と共寝するようになってから、以前に輪をかけて朝が苦手になったようだ。どうやら、俺は君の隣だと安心しきってしまうらしい。困ったものだ。
と彼はエメラルドの瞳を細めて笑ったのだ。
(オリヴァー様が私の隣でくつろいで下さるのなら、光栄だわ)
彼女は眠たそうに毛布にもぐりこむ彼を愛おしげに見詰めた。するとニュッと中から手が伸びて、シャーロットを抱き込んでしまう。
「きゃっ」
「一人だけ起きているなんてつれないな。一緒に朝寝坊しよう」
「んもう……オリヴァー様ったら」
ちゅっちゅと二人は小鳥のようなキスを交わす。逞しい腕にふんわりと抱かれて心地よい。オリヴァーはシャーロットの髪に鼻を埋めて、「良い匂いだ」と囁いた。
この間初体験を終え、幸せいっぱいの彼女だが、しかしその心には小さなモヤモヤがある。
「ん……ふ……オリヴァー様……」
口づけが深くなりそうになると、不意に彼は唇を解いてしまったのだ。
(あ、またですわ……)
シャーロットは残念に思いながら瞳を開けた。
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