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デート
「ん! とても美味しいですわ。なんだかほっとします。いくらでも食べられそうですわ」
シャーロットはにっこりと笑った。それを見て、オリヴァーを初め老夫婦も和やかに笑う。
今日のシャーロットはコーラルピンクの半袖のドレスを着ていた。ざっくりと開いた胸元は大きなフリルがついている。パフスリーズの肩からすらりとした二の腕が伸びていた。その袖口にも襟ぐりと同じフリルがたくさんつけられていた。腰はキュッとしまり、スカートは骨組みで大きく膨らませた流行のシルエットを採用している。
スカート部分はレースが一段、フリルが四段で、計五段の大ボリュームだ。この格好に、髪の毛を結い上げ、造花の薔薇がついた帽子を被り、レースの手袋をしたら完成である。
シャーロットの為に誂{あつら}えられたこのドレスはオリヴァーからの贈り物である。今彼女の耳で揺れているサファイアの雫型のイヤリングも同様だ。
彼はこのドレス一式を渡す際に、こう言った。
――婚約指輪はいま準備しているところだ。楽しみにしていてくれ。その指輪を渡すとき、改めて俺からプロポーズさせて欲しい。
とシャーロットの手の甲に恭しくキスをした。まさに憧れの騎士像そのものという仕草に彼女はドキドキして頬を林檎色に染めたのだった。
もちろん本日こうしてドレスを身につけた時も、オリヴァーは大変喜んでいた。
――可愛い。とても似合っているね。今日のデートにぴったりだ。
(デ、デートだなんて……照れますわ)
シャーロットは食後の美味しい紅茶を飲みながらも、半分上の空だった。今日の二人きりの外出が楽しみでしかたないのである。
(ああ……いけない、すでにワクワクしていますわ)
「ところでオリー、最近また魔物が暴れていると聞くが、本当なのかね」
老ブランドンが心配そうな顔で言った。
「ええ。まだ魔王ギリェルモが残っていますからね。奴を葬らない限り、残党は現れるでしょう」
「まあ……大丈夫なの、二人だけで出掛けたりして。やはり従者をつけましょうか?」
マダム・ブランドンも夫と同じような表情をする。今日はお供無しで街に行くつもりである。
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