甘すぎますわ

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甘すぎますわ

(やっぱり素敵だわ……オリヴァー様。まるで彫刻のよう)  店内の娘達がちらちらと彼を盗み見ていることにシャーロットは気がついていた。当然である。こんなに美しい男性はもう芸術品、人類の宝と言っていいくらいだ。ひとり占めなどおこがましくて出来そうにない。 「いいお茶だね」  オリヴァーが微笑んだ。シャーロットもカップを傾ける。 「本当ですわ。色も綺麗で、香りも良いですね」 「ああ、君の顔を見ながら飲むと、より一層美味しく感じるよ」 「オリヴァー様ったら……お上手ですわ」 「お世辞ではない、本心だ。気づいているかい? 店の中にいる男共が皆君を見ていることに」 「えっ……」 「君があまりに美しいから目を奪われているのさ。いけないな、シャーロット。存在だけで男を狂わせるとは」 「まあ……私そんなつもりじゃ……」 「分かっているよ。馬車から降りてから、君は男達を虜にしている……それが面白くないだけさ。ただの焼きもちだよ」 「またまた……オリヴァー様はお戯れを……」 「そう思うかい?」 「だって私のような没落貴族の娘に……焼きもちだなんて」 「俺は嫉妬深いんだよ、シャーロット。本当は君を誰にも見せたくない、籠に入れて閉じ込めておきたいくらいだよ。心が狭いのさ。――本当の俺は、愛する女性の心変わりに怯えるただの一人の男さ」  オリヴァーは目を細めて言った。きらめくエメラルドの瞳に頬を紅潮させたシャーロットが映っている。 「……っ」  情熱的な言葉の数々に彼女はクラクラした。 (甘い、甘すぎますわ……。こんな調子で大丈夫なのかしら、私。まだデートは始まったばかりなのよ……)  茹でだこのように真っ赤になったシャーロットとは反対に、オリヴァーはとても楽しそうに笑っていた。  アフタヌーンティーの後、二人はブランドン家おなじみの宝飾店と服屋に向かった。どの宝石も立派で豪華で、同じくどの洋服もお洒落で、高価だった。郊外にあると言っても、ブランドン公爵領はそこらの地方都市に匹敵するくらい栄えている。なので、王都で流行しているものがすぐ入ってくるのである。
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