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昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある冬の日、おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。
昨晩は、雪が降ったのでしょう。
凍てつくほど冷たい川の水が、指先に刺さります。
おばあさんの手は度重なる水仕事により、カサカサのボロボロでした。
「あっ」
おばあさんは、思わず声をあげました。
とうとう、指があかぎれでパックリ割れてしまったのです。
この季節になると、いつもひどい手荒れに悩んでおりましたが、こんな過酷な環境下では、どうすることもできません。
おばあさんは、ひび割れた手に息を吹きかけこすりながら、とぼとぼと家に帰りました。
おじいさんが帰ってきたのは、もうすぐ日も暮れるころでした。
しかし、いつも山から背負ってくるはずの薪がありません。
おばあさんは、腹が立って、おじいさんを責めたてました。
「こんな遅くまで、柴刈りもせず、何を遊び惚けていたんだい。
私は、冷たい川に凍えながら、必死に水仕事をしていたというのに」
怒り狂うおばあさんに向かって、おじいさんは言いました。
「ばあさんは、水仕事のせいで、いつも手荒れがひどかったろう。
ほら、集めた薪を町で売って、高級ハンドクリームを買うてきたぞ」
おじいさんはそう言うと、おばあさんの手を取り、優しく円を描くようにクルクルと塗り込みました。
高級ハンドクリームは、カサカサの手にも、ささくれだった心にも深くじんわりと沁みていきます。
しっとりとうるおいを与えられた肌は、その期待に応えるように、次第に熱を帯びていきました。
時に優しく、時に激しい指使いに弄ばれ、そのころにはもう瞳は潤み、唇からは抑えきれない熱い吐息が漏れてくるのでした。
おばあさんは、おじいさんの献身的な優しさと高級ハンドクリームの効果によって、かつての潤いを取り戻したのです。
そうして、おじいさんとおばあさんは、かわいい男の子を授かりました。
二人はあの優しさと幸せに満たされた夜のことを忘れぬよう、その子に「ゆび太郎」と名付け、可愛がりましたとさ。
めでたしめでたし。
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