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2.親睦を深めよう
背丈の差から、後ろから見ると姉妹のような二人。けれど、実際のところはどうなのかというと……。
「栗ちゃん、ほっぺにご飯粒ついてる」
「ありがと」
それはお昼時のワンシーン。背の高さとは異なり、しっかり者は栄里奈の方だった。
──二人が知り合って間もない頃。栄里奈は栗乃から家に遊びに来てとお誘いを受けたのだった。
約束の時刻になったので、栄里奈は待ち合わせの場所に行った。遅れること無く真面目に十分前行動。すると栗乃が既に待っていた。
「こっち」
そうして栄里奈は栗乃に案内されるままついて行くと……。
「でかい」
わーお、すげぇ。栄里奈はそういう感嘆の思いを大きさに表した。
二人の目の前にはタワマンがあった。とても高い。新しくて家賃も滅法高そう。
そんでもってエレベーターで上がっていく。ぐんぐん上昇し、二十階くらいで止まる。
「ここ」
エレベーターを出てから程なくして、二人の目の前には秋山と書かれた表札。ここが栗乃の自宅なのだった。
で、入ってみると。
「お邪魔しゃす。……おぉうすごい! 眺めがいい!」
ゆーらりが丘駅や学校はおろか、もっと遠くの街までよく見える。
けれどはしゃぐ栄里奈と違って、栗乃はどこか浮かない表情。
「栗ちゃん。どしたの?」
「高い所。あんまり好きじゃない」
「ええ」
何でそうなるのか? 思わず栄里奈は突っ込みを入れたくなった。ここはタワマンですぜ!? そう言いたくなった。
「それってその。高所恐怖症?」
「そうじゃない」
その心配は無いようだった。では、どういうことなのだろう? 首を傾げる栄里奈に栗乃が言った。
「私のお父さんとお母さん。仕事でいつも忙しいから」
栗乃は俯いた。
「いつもここで、お留守番してるの」
「あー。高いタワマンだから、お空の上で独りぼっち、てことか」
そう。栗乃は頷いた。
栗乃は表情も口調も大きく変えない子だけれど、とても繊細な心の持ち主なんだと栄里奈は理解した。
「ちなみに今日は、お父さんとお母さんは?」
「出張。来週まで帰ってこない」
「ありゃー。そか」
栗乃は日々、とても寂しかったので、思わず栄里奈を呼んでしまったのだった。友達になったばかりのクラスメイトを。
ここで栄里奈は一つの案を思いついた。
「……。ね、栗ちゃん。栗ちゃんが良ければ、なんだけどさ」
「うん?」
「お泊まりしても、いい?」
今日は土曜日。明日もお休み。
栄里奈の提案に、栗乃の表情が少し柔らかくなった。
「うん」
体中から嬉しさが溢れているのがわかった。
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