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4.ハグと……
「栗ちゃんのこと。少し、わかってきたような気がする」
「そう」
お風呂上がり。
二人で一緒に入っても尚、広さに余裕のある程ゆったりとしたバスルームだった。
栄里奈がドライヤーを借りて髪を乾かそうとしたら、栗乃が直々にやってくれた。
なので髪が乾いたら交代。今度は栄里奈の番。
「栗ちゃんは、髪も栗色なんだね。綺麗」
「ありがと。栄里ちゃんの金色の髪……きらきらして、綺麗」
実のところ、栄里奈は栗乃の髪に触れてみたかった。ドライヤーで髪を乾かすのは実にいいタイミング。
柔らかくてふわふわの髪が心地良い。
「ねえ栄里ちゃん」
「なんでしょい?」
「私……その。馴れ馴れしくて、ごめん」
「んーん? 全くそんな風には思ってないけど?」
「まだ知り合ったばかりなのに、家に遊びに来てとか言ったから」
「んで、お泊まりさせてって言ったのは、私の方。それにさ」
栄里奈は細い指を櫛代わりにして、栗乃の長い髪をすいていった。丁寧に、ゆっくりと。
「もっともっと、仲良くなりたいなって思った。栗ちゃんのこと、知りたいなって」
栄里奈はきゅっと、栗乃の背中に抱きついていた。
「ほーら。私の方が馴れ馴れしいっしょ? ……あ、もし嫌なら言って。やめるし、こういうことはもう二度としないから」
「嫌。……違う。そのままでいて。違う」
栄里奈は一瞬ぴくんと反応したけれど、栗乃の言う通りにした。
「ハグ。二度としないなんて嫌。ということを言いたかった」
「あい了解。……一目惚れ。ほぼそんな感じだったんよ」
「好きになっちゃった。いきなり」
噛み合わないようでいて、しっくりくる会話。おかしな二人。
お風呂上がりの火照りがまだ冷めていないからか、二人して同時に抱いた思いを打ち明けていた。
「私も、好き」
「うん」
軽く、ほんの少しだけ触れ合う程度のキス。どちらからともなく正面を向いて目を閉じて、女の子同士の親愛を確かめ合う行為。
それで満足。それだけでよかった。十分すぎた。
(き、キス……しちゃった。女の子と)
赤面して口元を手で押さえる栄里奈と。
(私……大胆すぎる)
栄里奈と顔を合わせられない栗乃だった。
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