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一息ごとに、コンクリート臭い熱気にむせ返りそうになる。
顎から滴り落ちる汗を乱暴に拭う。
「…くっそ、気持ち悪ぃ…」
激務帰りの体に、真夏の太陽はどこまでも優しくない。
俺は恨めしげに蒼穹の空を仰いだ。
「……?」
その時。
空に小さな、白い点が見えた。
最初は白い鳥かと思ったが、どうやらそれは何かの紙のようだった。
それは夏風にあおられ、ひらひら、頼りなく空を舞う。
手を伸ばし、掴んだ。
『ふーたへ』
その、幼児が書いたらしい文言が目に飛び込んできて、おや、と思う。
手紙…か。
瞬間、今までの疲れを忘れてその手紙に視線を落とす。
「ふーた」の文字を横切るように折り線が入っていた。
元は紙飛行機だったのかもしれない。
どうやらそれは「ふーた」さん宛のものらしい。
これを書いた子供の、兄が何かだろうか。
小さな子供が、兄さん宛てに書いた手紙を、ポストに入れようとする。
だが、それは強風に煽られて、空に舞い上がる.
そんな情景が見えるようで、微笑ましい。
「…にしても、何処からこれが飛んできたんだ…?」
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