3

13/17
前へ
/247ページ
次へ
天野さんが食器を洗ってくれている隣で、私は珈琲豆を挽く。 「手動なのか・・・。」 「はい。この時間も好きで。」 「結構古いコーヒーミルだな?」 「母が使っていた物です。 珈琲だけは母の味が出せているはずです。 小さな頃から隣で見ていたので。」 「そうか・・・。 アイスコーヒー?」 「はい、真夏なのでアイスコーヒーです。」 「俺も・・・少し貰おうかな。」 「カフェイン大丈夫ですか?」 「少しだけならな。 それに、お前のお陰でよく眠れてるし。」 天野さんが優しい笑顔でそう言ってくれ、私はいつもより多めに瞬きをした。 コーヒーミルが鳴らす音と珈琲豆の香り・・・。 この場面が私の中で記憶される・・・。 そんな私に天野さんが満足そうな顔で笑い・・・ 瞳に熱が込められたのが分かった・・・。 そして、ゆっくり・・・ ゆっくり・・・ 私に、私の顔に天野さんの綺麗で格好良い顔が近付いてきて・・・ 私の唇に少しだけ、天野さんの唇が触れた・・・。 初めてした男の人とのキスは、天野さんとのキスは・・・ 珈琲豆の香りと、私の煩い心臓の音と、緊張しすぎて固まった身体と・・・ 「息しろ!!!!」 止めてしまっていた呼吸・・・。 私の唇から離れた天野さんの顔は、照れたような恥ずかしそうな顔で、でも幸せそうな顔をしていた・・・。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

996人が本棚に入れています
本棚に追加