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クロムは支度を整えて扉を開け通路へと出る。
待ち構えていたケリスが「おはようございます」と深く頭を下げてきた。
クロムは「おはよう」と言って歩き出す。
クロムの部屋の傍に立っている黒い鎧の騎士も頭を下げてきたので、軽く「おはよう」と返した。
「若、本日のスケジュールですがーー」
「取り敢えず、全部キャンセルして」
「ーーえ?」
ケリスは呆気にとられて立ち竦む。
「いや、ちょっとやらなきゃならない事が出来てさ」
「やらなきゃならない事とは?」
「色々だよ。ケリスに任せるからさ。一日くらい休んでも問題ないだろ?」
「左様でございますか。畏まりました」
言ってケリスは、「しかし」と眉を潜める。
「一件、どうしても私では難しいものが」
「なに?」
「起床して直ぐに来るようにと、ベリアル閣下が仰有ってまして」
「えー、面倒くさいな」
「そう言わずに。閣下は若を気に入って目をかけてくださっているのですから」
「そう、だよなぁ。うん。それは今から向かうよ」
クロムは踵を返す。
ケリスもそれに従って付き添う。
「所でさ」
「はい?」
「俺って今、18歳だよな?」
「はい?えぇ、そうですが。それが何か?」
「いや、何となく」
ケリスは首を傾げる。
しかし直ぐにハッとした。
「19歳の誕生日でしたら、盛大に祝うよう準備を進めておりますので、御安心ください!」
「いやいや半年も先だろ?盛大にって、、、質素で良いよ質素で」
「何を仰有います!次期【魔王】様筆頭の若がそんな事では、下に示しがつきません!」
「そう言われても。俺養子だし、【魔王】様の子が生まれたら継承権はそっちに移るから」
「そ、それは、そうですが、、、」
ケリスは口を尖らせてモゴモゴと何かを言う。
クロムはそれを無視して顎に手を当てた。
「しかし18か。ゲームだとどれくらいの時期なんだ?」
いくらハマっていたゲームだとして、年齢まではしっかり把握していない。
加えて慎一から見てクロムは、身の上も頭も可哀想なキャラクターであった為、あまり好きではなかった。
「俺がちゃんとしたゲーマーだったら、細部まで把握してたのになぁ」
身体的に強い方ではなく、長時間やり込んでいた訳ではない自分が悔やまれる。
記憶にあるのは、雑多に覚えたキャラクター達のストーリーくらいだ。
ただ一人を除いてだが。
「はい?」
ケリスに顔を覗き込まれ、クロムは「あ、いや」と慌てる。
「ベリアルさんを待たせるのも悪いし、少し急ごう」
クロムは言うと、歩く速度を早めた。
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