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クロムは街灯の下を歩いていた。
灯りに照らされたクロムの影が僅かに揺れ、クロムは一瞬だけ視線を向ける。
「何処行ってた?」
問い掛けに、「ちょっと」と影が答える。
「脅しの時は誰が相手でも喋れるんだな?」
皮肉を込めて言えば、「聞いてたの!?」と影であるボーグが驚く。
しかしクロムは「やっぱり脅しに行ってたのか」と呆れた。
「若にかまかけられたー」
悲しげにボーグが言う。
「別に構わなかったんだぞ?俺は。盗られて本気で困るもんは置いてねぇし、出ていくにも先立つ物がなきゃ無理だろう?」
「出ていってほしかったの?」
「、、、まぁな。面倒事は御免だしな」
「その割にこの仕事受けたんだ」
「指令だから断れなかったんだよ。まぁ、俺の目的とも都合が良かったしな」
「それって、お昼に言ってたアリアタンの為ってやつ?」
「アリア"たん"な?若しくはアリアたそでも可」
ボーグは影を揺らし、「意味が分からないよ。若」と声を不安色に染める。
「アリア姫の為だよ」
「若が助けたっていう?」
「そうだ」
「アリア姫とこの仕事がどう繋がるのさ?」
クロムはニヤッとする。
「後々効いてくるんだよ。こういう調べもの系のクエストってのはな」
「答えになってないよ」
「まぁ、楽しみにしてろ」
ボーグは「はーい」と生返事をするも、「それで、これから何処に?」と質問を重ねる。
クロムはまたニヤッとして、「町長の家だ」と言った。
「何で?」
「キマリスがパーティーを開く際、その会場を提供しているのが町長であるグィドルだからだ」
「そうじゃなくて、何でこんな時間に?」
クロムは視線を影へ向け、「迷惑か?」と笑む。
「自分より高位の者が来るのなら迷惑とも言いづらい時間帯だけど、連絡なしの訪問だし、常識外れではあるんじゃないかな?」
「常識外れだから良いんだよ」
「え?」
「この時間だ。昼間より使用人の数は圧倒的に少ないはずだ。つまり、突然訪問してきて資料提供を催促する俺に対し、何かを隠す暇は作りづらいよな?」
「うわぁ、悪い人だ」
「悪魔の息子だからな」
二人はケタケタと笑う。
「とはいえ、着いたら先ずはグィドルと話をする流れになるだろう。お前はその間屋敷を調べて怪しい事をしてねぇか見ておいてくれ」
「了解。でも、怪しいって?」
「資料を隠そうとしてるとか、些細な事なら何でも良い」
クロムが言うので、ボーグは「分かった」と返事をした。
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