第2章ー嘘も方便、下卑た雄弁ー

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その屋敷は、街の中央に大きく構えていた。 敷地はだだっ広く、鉄格子の門の向こうに三階建ての大きな屋敷が見える。 「この街ってそんな儲かってるのか?」 言ってクロムは「いや」と首を振る。 「疑いだすとキリがねぇからな」 クロムはそう言うと、呼び鈴を鳴らす。 「はい」と呼び鈴のそこから女性の声がした。 「夜分にすみません。クロム・ノックハートという者ですが、グィドルさんはご在宅でしょうか?」 問い掛けに呼び鈴の向こうの女性は一度「はぁ」と半信半疑な返事をする。 しかし突然「はい!?」と声を大きくした。 「ク、クククロム・ノックハートォ!?」 「はい。そうです」 「え!?ほ、本物!?」 「ご確認していただいても構いませんが」 クロムが平坦な声音で言うと、女性は何度も咳払いをして「し、少々お待ちください」と言った。 そうして、呼び鈴から「ちょっとあんた!!クロム様来てるって!!!本物か確認して!!!」と聞こえた。 「奥様ですか?あのう、声入ってますよ」 「あ、、、失礼しましたぁ。ウフフ」 頑張ってるのか、少しだけ上品そうな声で言うと、呼び鈴の声の繋がりがプツンと途切れた。 クロムは呼び鈴を見つめる。 「なるほど。術式で魔素を魔力変換して電力を流してんのかと思ったけど、単純に押した人間の魔力で音が鳴る仕組みなのか」 クロムの記憶により得た魔法的知識で感心していると、門の向こうより大慌てで誰かが出てきた。 その人物は転びそうになりながらクロムの方へと駆け寄ってくる。 「お、お待たせ致しました!!」 そう言うのは、紫色の肌をして大きな耳を尖らせた悪魔だった。 「初めまして。クロム・ノックハートと言います。グィドルさんでお間違え無いでしょうか?」 問い掛けに、悪魔は「これは御丁寧にありがとうございます!グィドル・ジャンブでございます!」と深く頭を下げる。 グィドルと名乗った悪魔は門を開け、「ささ、中へ」と招き入れてくれる。 「一応、証明できる物を幾つか持ってきたのですがーー」 クロムが懐を探ると、「いえいえ!」とグィドルは慌てる。 「クロム様でしたらお城でも何度かお会いしておりますし!私が間違えるはずもございません!!」 「そう、でしたっけ?すみません。覚えてなくて」 「毎日何十何百と魔族にお会いになるのですから致し方の無い事でございます。して、本日は何用でこちらに?」 言ってしかし、グィドルは「いえ、立ち話をさせるのは失礼になりますので、どうぞ屋敷の方へ」と案内してくれる。 クロムも「では」と頷いて、グィドルの背を追った。
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