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案内されたのは、広い応接室であった。
向かい合ってソファに座ると、「先程は、家内が失礼しました」とグィドルが言う。
「いえ、こちらも突然お邪魔してしまって」
「何を仰有います。クロム様に来ていただけるなんて光栄な話はそうありはしません」
建前であろうが、グィドルはそう言って次に眉尻を下げる。
「それで、御用件は一体、何でしょうか?」
「あぁ、実は、城で興味深い話を聞きまして」
「興味深い話?と言いますと?」
「何やらここアキスで、キマリスが高位魔族を集めたパーティーをしているとかで」
グィドルの瞳が一瞬揺れたのを、クロムは見逃さなかった。
「は、はぁ。確かに、キマリス様から時々場所を貸してほしいと言われて、何度か提供させていただいておりますが」
動揺を隠そうとしているグィドルに、クロムは笑顔を見せる。
「そんなに身構えないでくださいよ。別に取って食おうって話じゃありませんから」
クロムが大きく笑うので、グィドルも「ハハハ」と笑う。
「実はね。俺も一枚噛ませてほしいんですよ。奴隷の売買に」
グィドルの表情が固まった。
「ど、奴隷の?何の話ですか?」
クロムはわざとらしく「あれ?おかしいな?」と首を捻る。
「いやね、キマリスって相当な出不精なんですよ。領土の統治はしっかりとやってもらってますが、自分の屋敷からほとんど出る事のない方なんです」
グィドルの顔が紫色を濃くしていく。
「そんな彼がパーティーの為に何度もアキスまで足を運ぶってのは、どうにも納得できないんですよ」
クロムはグィドルへ顔を近付け、低い声で「名義貸しですよね?」と言った。
「あ、えっと、その、、、」
「あー大丈夫ですよ。それは違法でも何でもないので、咎めたりしません」
クロムは両手の平をグィドルへ向けて振りながら続ける。
「ただそうなると、何のためのパーティーなのかが今一分からなくて、人脈作りだとしても、そういった動きをしている魔族は特に見当たらない。おかしいですよね?こういったパーティーって得をする誰かが居るから開催されるものだと思うんです。高位の魔族を態々呼んでいるのだから」
クロムは天井を見上げながら、「誰が得をするのかなーって考えてみたんです」と言って、視線をグィドルへと戻す。
「全員なんじゃないですか?利害の一致というやつです」
突然真剣な顔になったクロムに、グィドルは「ヒヒ」と顔をひきつらせて笑った。
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