第2章ー嘘も方便、下卑た雄弁ー

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案内されたのは、広い応接室であった。 向かい合ってソファに座ると、「先程は、家内が失礼しました」とグィドルが言う。 「いえ、こちらも突然お邪魔してしまって」 「何を仰有います。クロム様に来ていただけるなんて光栄な話はそうありはしません」 建前であろうが、グィドルはそう言って次に眉尻を下げる。 「それで、御用件は一体、何でしょうか?」 「あぁ、実は、城で興味深い話を聞きまして」 「興味深い話?と言いますと?」 「何やらここアキスで、キマリスが高位魔族を集めたパーティーをしているとかで」 グィドルの瞳が一瞬揺れたのを、クロムは見逃さなかった。 「は、はぁ。確かに、キマリス様から時々場所を貸してほしいと言われて、何度か提供させていただいておりますが」 動揺を隠そうとしているグィドルに、クロムは笑顔を見せる。 「そんなに身構えないでくださいよ。別に取って食おうって話じゃありませんから」 クロムが大きく笑うので、グィドルも「ハハハ」と笑う。 「実はね。俺も一枚噛ませてほしいんですよ。奴隷の売買に」 グィドルの表情が固まった。 「ど、奴隷の?何の話ですか?」 クロムはわざとらしく「あれ?おかしいな?」と首を捻る。 「いやね、キマリスって相当な出不精なんですよ。領土の統治はしっかりとやってもらってますが、自分の屋敷からほとんど出る事のない方なんです」 グィドルの顔が紫色を濃くしていく。 「そんな彼がパーティーの為に何度もアキスまで足を運ぶってのは、どうにも納得できないんですよ」 クロムはグィドルへ顔を近付け、低い声で「名義貸しですよね?」と言った。 「あ、えっと、その、、、」 「あー大丈夫ですよ。それは違法でも何でもないので、咎めたりしません」 クロムは両手の平をグィドルへ向けて振りながら続ける。 「ただそうなると、何のためのパーティーなのかが今一分からなくて、人脈作りだとしても、そういった動きをしている魔族は特に見当たらない。おかしいですよね?こういったパーティーって得をする誰かが居るから開催されるものだと思うんです。高位の魔族を態々呼んでいるのだから」 クロムは天井を見上げながら、「誰が得をするのかなーって考えてみたんです」と言って、視線をグィドルへと戻す。 「全員なんじゃないですか?利害の一致というやつです」 突然真剣な顔になったクロムに、グィドルは「ヒヒ」と顔をひきつらせて笑った。
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