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ボーグは屋敷内を探索していた。
柱の影から影へと、目にも止まらぬ速さで移動していく。
(資料関係の場所って何処にあるんだろう?)
部屋から部屋へ渡るも、それらしき場所は見当たらない。
(やっぱり下かな?)
三階まで到着し、隈無く探したつもりなので、地下の存在を疑い始めた時だった。
「何かちょこちょこ嗅ぎ回ってる野郎が居ると思ったらお前か」
「ーーッ!?」
天井の柱の影に居たボーグを真っ赤な手が掴んできた。
あまりに唐突だったので、ボーグは反応が遅れてしまう。
ボーグは角の先を指先で掴まれ、その巨大な鬼の顔の前で宙ぶらりんになる。
顔も真っ赤なその鬼は、体長が5メートル程もあった。
ボーグはいぶかしむ。
(妙だ。いくらなんでも僕が気付かないなんて、、、)
思考しながら、腕は何処から出てきたかと熟考へ変じた時、「お前!ボーグか!」と鬼が言った。
「へ?」
「俺だよ俺!ジャッキーだよ!忘れたのか?」
「え!?ジャ、ジャッキーくん!?」
ボーグは言って、嫌な記憶を甦らせる。
ジャッキーと名乗った鬼は「何でお前が」と視線を下の階へ向ける。
「あぁ、そういう事か。お前、昔から若様の腰巾着だったもんなぁ」
ボーグは口を閉じて視線を逸らす。
瞬間、ジャッキーはボーグを廊下の床へ叩き付けた。
ボーグは突然の事に「ぎゃ!?」と悲鳴をあげる。
痛みに耐え、床を転がるボーグをジャッキーは踏みつけた。
「そうか。"昼間"のもお前らだったって訳か」
ボーグはジャッキーの足の隙間から見上げ、睨もうとする。
しかし、踏みつける強さが増して目を閉じてしまった。
ジャッキーはケタケタと笑う。
「相変わらず弱いなぁ。お前は」
「ククク」と笑いながら、またボーグを踏みつける力を増した。
「いやー、しかし、お前で良かったよ。俺はやっぱ運が良い」
ボーグは「どういう意味?」と口を開くが、声は出なかった。
代わりに悔しげに唇を噛む。
「これでアニキに叱られずに済む」
ジャッキーはボーグへ顔を近付けた。
「なぁ、頼みがあるんだよ」
「、、、なに」
消え入りそうな声だが、ボーグはやっと言えた。
「アニキのガキが昼に獣人の奴隷を逃がしちまってよぉ。お前らが拾ってたら、返してくれるよう若様に頼んでくれねぇか?」
「な、、、んで、僕がーーッ!?」
一瞬息が止まった。
踏みつける力が一段と強くなったからだ。
「やれよ?」
ドスをきかせたジャッキーの声に、ボーグは小さく「はい」としか答えられなかった。
瞬間に足が退かされ、「じゃあ、頼んだぜ」とジャッキーは笑顔で言った。
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