第2章ー嘘も方便、下卑た雄弁ー

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ボーグは屋敷内を探索していた。 柱の影から影へと、目にも止まらぬ速さで移動していく。 (資料関係の場所って何処にあるんだろう?) 部屋から部屋へ渡るも、それらしき場所は見当たらない。 (やっぱり下かな?) 三階まで到着し、隈無く探したつもりなので、地下の存在を疑い始めた時だった。 「何かちょこちょこ嗅ぎ回ってる野郎が居ると思ったらお前か」 「ーーッ!?」 天井の柱の影に居たボーグを真っ赤な手が掴んできた。 あまりに唐突だったので、ボーグは反応が遅れてしまう。 ボーグは角の先を指先で掴まれ、その巨大な鬼の顔の前で宙ぶらりんになる。 顔も真っ赤なその鬼は、体長が5メートル程もあった。 ボーグはいぶかしむ。 (妙だ。いくらなんでも僕が気付かないなんて、、、) 思考しながら、腕は何処から出てきたかと熟考へ変じた時、「お前!ボーグか!」と鬼が言った。 「へ?」 「俺だよ俺!ジャッキーだよ!忘れたのか?」 「え!?ジャ、ジャッキーくん!?」 ボーグは言って、嫌な記憶を甦らせる。 ジャッキーと名乗った鬼は「何でお前が」と視線を下の階へ向ける。 「あぁ、そういう事か。お前、昔から若様の腰巾着だったもんなぁ」 ボーグは口を閉じて視線を逸らす。 瞬間、ジャッキーはボーグを廊下の床へ叩き付けた。 ボーグは突然の事に「ぎゃ!?」と悲鳴をあげる。 痛みに耐え、床を転がるボーグをジャッキーは踏みつけた。 「そうか。"昼間"のもお前らだったって訳か」 ボーグはジャッキーの足の隙間から見上げ、睨もうとする。 しかし、踏みつける強さが増して目を閉じてしまった。 ジャッキーはケタケタと笑う。 「相変わらず弱いなぁ。お前は」 「ククク」と笑いながら、またボーグを踏みつける力を増した。 「いやー、しかし、お前で良かったよ。俺はやっぱ運が良い」 ボーグは「どういう意味?」と口を開くが、声は出なかった。 代わりに悔しげに唇を噛む。 「これでアニキに叱られずに済む」 ジャッキーはボーグへ顔を近付けた。 「なぁ、頼みがあるんだよ」 「、、、なに」 消え入りそうな声だが、ボーグはやっと言えた。 「アニキのガキが昼に獣人の奴隷を逃がしちまってよぉ。お前らが拾ってたら、返してくれるよう若様に頼んでくれねぇか?」 「な、、、んで、僕がーーッ!?」 一瞬息が止まった。 踏みつける力が一段と強くなったからだ。 「やれよ?」 ドスをきかせたジャッキーの声に、ボーグは小さく「はい」としか答えられなかった。 瞬間に足が退かされ、「じゃあ、頼んだぜ」とジャッキーは笑顔で言った。
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