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グィドルは震えていた。
拳に肩、瞳を動揺激しく揺らしている。
「横暴、そう!横暴だ!いくら王族でもやって良い事と悪い事がありますよ!」
「調べられると不味い事があるんですか?」
「そ、そうではなく!」
「では問題ありませんよね?」
グィドルは閉口する。
「わ、私達にもプライバシーがあります」
「確かにそうですね」とクロム。
「ではこうしませんか?もし何も出なければ、俺に対し抗議の書面を軍にお出しください。処罰は正当なあなたの権利ですから」
「私達のような者が、王族に対してそんな事できるはずないじゃないですか!」
「それは特に問題ないかと思いますがねぇ」
クロムは「うーん」と熟考する。
そうして、ポンと手を叩いた。
「では、俺の権限であなたを魔王城に登用するというのはどうでしょう?」
「、、、え?」
グィドルの目の色が変わった。
クロムはニヤッとする。
「階級は、そうですね、最低でも中佐クラスを用意しましょう。小さな町の町長からすれば、給料は今の倍、いや、それ以上になるはずです」
「そ、そんな事、可能なんですか?」
「俺の階級が大佐だからと馬鹿にしないでくださいね?俺の派閥は今や軍でも半分以上にのぼります。それくらいは容易ですよ」
グィドルは座り直し、視線を右往左往させる。
決めあぐねているのは確実であった。
「俺だって失敗を表には出したくないので、それで手を打っていただけると幸いです」
「、、、し、しかし」
もう一押しだとクロムは笑顔を見せる。
「まぁ、今日はもう遅いですし、明日の朝から一日をかけて調査させていただければ結構です。何も出なければ、大人しく帰ります。俺だって軍の要請で来ているので、何も無しに帰る訳にはいかないんですよ」
「、、、明日、ですね?」
「はい。明日です」
グィドルは熟考し、「分かりました」と頷いた。
クロムは即座に立ち上がり、「では、契約成立ですね」と右手を差し出す。
グィドルも慌てて立ち上がり、握手をした。
「まぁ、本音を言えば一口乗らせてもらった方が、金になるんで良かったんですけどね」
「ご、ご冗談を。私は本当に何も知らないんです」
「そのようですね。これが終わったらキマリスの方へ行って、話を聞いてみますよ」
ニッコリと笑うクロムに、「それで」と手を離しながらグィドルが続ける。
「何も無かったら、本当に?」
クロムは頷く。
「勿論。悪魔は契約に煩い種族です。約束は必ず守りますよ」
「しかしあなたは、人間では?」
クロムは「ハハハ」と笑う。
「確かに俺は人間ですが、魔を統べる王。れっきとした悪魔の息子です」
その笑顔は、悪辣に歪んでいた。
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