1-12. 空回りした溺愛の果て

4/11
前へ
/608ページ
次へ
 小刀をちらつかせたまま、顔をむき出しになった乳房に近づけ、有弦はいたぶるようにその頂に噛みつき、れろれろと舌を這わせていく。口淫を受けていないもう片方の乳首まで、勝手に勃ちあがってしまい、音寧は恥ずかしそうに首を左右に振って喘ぐ。 「どうしたんだい? こっちはまださわってもいないのに……」 「あ、ひ……」  もう一方の肩紐だけで支えられている隠された乳房の中心部に舌を伸ばし、夜着の布地ごと彼が愛撫をはじめれば、音寧はもうひとたまりもない。彼女が彼の舌に溺れている間に、残された肩紐も小刀であっさりと切断され、彼が顔をはなすと同時につるりと身に纏っていた藤の花が散華するかの如く、寝台の上へと滑り落ちる。 「いつ見ても綺麗な身体だ……俺のものだという痕をつけてやらないとな」 「んっ」  薔薇の花を咲かせたかのような接吻の痕は抱かれる都度、強く吸われる。薄れて完全に消える前に、もう一度痕跡をつけなくてはと有弦は身動きの制限された妻の肌に唇を寄せ、ゆっくりと吸い痕をつけていく。
/608ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加