1-12. 空回りした溺愛の果て

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 しっとりとした唇でふれられ、柔らかな肌を吸われて痕跡を残されるたびに、自分は彼に求められていると強く感じられる音寧は、甘い声を奏でて、彼のしたいようにさせる。けれど、焦らすように唇で身体中を撫ぜる行為は、音寧の下腹部に疼きを発生させ、彼女を悶えさせるものでもある。 「有弦さま……」 「足をもじもじさせてどうしたんだい? その愛らしい桜桃のような口で教えて?」 「いじ、わる……ッ」  藤の花が垂れ下がっているかのような淡い薄紫色の夜着を散らして真っ白な裸体を晒し、彼の接吻で薔薇の花を刻まれた音寧は、乳房ばかりを撫ぜる有弦の両手を恨めしそうに見下ろし、観念して、おねだりする。 「――したも、さわってください」
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