1-12. 空回りした溺愛の果て

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 達したばかりの身体はいまだに音寧の思考を邪魔するかのように有弦の手に躍らされている。首筋に接吻を受けて驚く音寧に、有弦はにやりとほくそ笑む。 「岩波山の汚点である罪の子の妻になったことを、憐れまれたんじゃないか?」 「――な、何を」 「それとも、早く子をもうけて離縁した方がいいって、お節介なことを口にしていたかな?」  手首を縛っていたリボンを今度は足首に巻き付け、有弦は嗤う。  自分が岩波山の五代目有弦であることは事実だが、本来は後継ぎの候補になることすら疎まれていた使用人の子だった彼にとって、目の前の高貴で美しい、いとおしい妻に正体を暴かれるのは辛く、厳しいものだった。ふだんなら無表情でとりなすことでも、音寧が普段通り何も言わないで彼に従うから、つい、苛立たせるようなことを口にして、責めてしまう。 「そのようなことは……有弦さま、いやっ」 「ふふ。周りになんと言われようが、もう、貴女を手放すことはできないよ。俺の言うことを聞かないでお庭に出ておきながら、そんなことは話していないなんて、信じられる?」
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