1-12. 空回りした溺愛の果て

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 音寧の右足首にリボンを巻き付け、寝台の足元を飾る枠に固定した有弦は、もう片方の足首にも同じようにリボンを巻いて、恥ずかしい場所を丸見えにさせる。両足を開いた状態でリボンに絡めとられた音寧は、まるで蜘蛛の巣に囚われたかのような錯覚に陥り、悲しそうに瞳を伏せる。 「……それは、初めて知ったときは、驚きましたけど……わたしも、どうせ双子の姉の身代わりでしかないから……」  しょんぼりした彼女の声音に、荒ぶっていた有弦の心が凪いでいく。  彼女もまた、身代わりでしかないのではないかと苦悩していたのに……自分ばかりが悲劇の英雄ぶっていたのだと愕然とする。 「有弦さま……資さまとおっしゃっていたのですね。わたしはそれすら知らないまま、彼方の妻として三月も過ごしていました」  硬直した有弦を潤んだ瞳が見上げている。彼女は拘束を解かれた両手で有弦の身体を抱き寄せ、申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。 「傑さまが亡くなられたことで、この岩波山を継がれることになったということも知らないまま……自分は死んだ双子の姉の代わりに高貴な血統を持つ後継を残すためにここに連れてこられたのだと、そればかり……」
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