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桂木とねと名を変え静岡の茶農家にいると知らされたときには気づかなかったが、祝言をあげて身体を重ねるようになって、有弦は資として生きていた軍人時代に一度、彼女と邂逅していたのではないかと思うようになっていた。
麗しい薔薇のような双子の姉、綾音とは違う、けれども凛とした芳しい百合のように清らかで……自分の前だけで淫らにはなひらく、かけがえのない女性。
「有弦さま……?」
「ああ、もしかしたらあの不思議な出来事自体が『時を味方につける』双子令嬢が起こした奇跡なのかもしれないな」
――大正十二年の夏?
音寧は帝都に行った記憶などない。
けれど、有弦は納得がいったかのようにひとり頷き、妻への愛撫を再開する。夫の発言を気にかけつつも、彼にふれられて考え事を霧散させてしまった音寧はそのまま快楽の渦へと堕ちてしまう。
彼もまた、音寧の反応を気にすることなく顔を秘処に埋めて溢れでる蜜をすすりはじめ、彼女の両手を強く握ったまま、舌だけで彼女を翻弄させる。
薔薇の花びらのような襞をかきわけ、ぴちゃぴちゃと蜜を掬い取る彼の舌先に躍らされて、音寧はつま先をきゅっと丸めながら意識を飛ばす。
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