1-13. ほんとうの夫婦のはじまり

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 彼女の反応を面白がるように有弦は腰を動かし、窓の向こうに浮かぶ庭先の光景を見せつけて、くすりと笑う。 「いい眺めだろう? 西洋風の四阿には行ったのかい?」 「……は、はいっ……っ!」  窓の向こうは真っ暗だが、白木の四阿は暗闇のなかでもぼんやり姿が確認できるし、庭園のシンボルとも呼べる湖のような観鏡池もキラキラとそれこそ合わせ鏡のように明かりを反射させて輝いている。  そういえば、綾音の形見の品である鏡が手元にない……庭園を散策していたときに落としたのかもしれないと今になって気づいた音寧は、有弦の腰の動きに反抗すべく、声をあげる。 「鏡!」 「……え?」 「落として……お庭に……きゃっ!」 「明日の朝、ふたりで拾いに行けばいいさ……こんな状態で真面目なこと言わないで、俺だけを感じておくれ」 「あぁあ、あんっ……ゆぅ、げん、さまぁああ!」
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