1-13. ほんとうの夫婦のはじまり

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 もどかしさと恥ずかしさに苛まれたままの音寧を知ってか知らずか、有弦の処置は日によってかかる時間が異なる。今夜はずいぶんゆっくりしている。 「も、もうだいじょうぶですから」  顔を真っ赤にして返せば、有弦はくすくす笑ってなかに挿入したままの指を焦らすように抜いていく。蓋をする、と言っているくせに、多少の漏れは気にしないのだ。とろりとした生暖かい液体が股を抜ける感覚に、音寧は感嘆の声をあげる。  愛妻の反応を確認した有弦は、そのまま懐紙で彼女の身体を清めはじめる。蕩けきった身体にがさがさした懐紙の感触は、拷問にも似ている。抱き合ったあとも献身的に音寧に尽くし、身体の隅から隅まで慈しむようにふれる有弦……これが、夫婦の営みとして当たり前のことなのか、音寧は知る由もない。ただ、すこし怖いと思うのも事実で。 「そんな風にふれられると……あぁ」 「感じやすい身体は、まだ俺を求めているのかい?」 「ち、ちがいますっ」 「懐紙で拭いて清めるより、俺の舌で舐め取る方がいいか……?」 「そんなこ……きゃあっ!」
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