1-14. 冬薔薇が散るその前に

9/12
前へ
/608ページ
次へ
「生娘のような反応をするんだな。何度も俺に抱かれているというのに」 「だ、だって外で……」 「敷地内だから問題ない。それ以前に俺たちは夫婦だ。そうだよな?」 「――はい、有弦さま」 「……可愛い妻が隣にいるのだから、たくさんふれたいと思うのは当然の心理だ」  そういうものなのか、と思わず納得しそうになった音寧だったが、そのまま彼に無防備な唇を重ねられて、驚きで目を白黒させてしまう。 「ン……っ」 「――おとね。双子の姉と比べる必要なんかないぞ。ご隠居は時宮の姫君の高貴な血とそれに付随する破魔のちからに期待しているようだが」 「ゆ……げん、さま……?」  ちう、ちう、と啄むような接吻を繰り返され、諭すように告げられて、音寧は困惑する。  ――有弦さまは、時宮の破魔のちからのことをご存知だった?  音寧にそのようなちからがないことも、とっくに見抜いていたというのか? 「不安そうな顔をしないでおくれ。そんな顔をされると、止められなくなる」 「止める、って何を……?」 「――接吻から先のことだよ」 「え……」
/608ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加