1-15. 水底で待ってる。

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 一年ほど経って資が五代目有弦を襲名し、その際に時宮の生き残りで静岡にいた双子の妹を花嫁に迎えたこと。  音寧が邸に幽閉同然の暮らしをはじめ、有弦との子作りを強要されていること…… 『最後のひとつは余計かしら? 身代わりで政略結婚したくせに仲が良いみたいだし。少なくとも資くんは音寧のこと悪く思ってないでしょ、だってあたしの可愛い妹だもの! ……そういえばぁ。鏡から姉君が見ている、なんて恐ろしいこと口にして音寧を苛めていたわよね……』  鏡が未来を見せてくれた、というが、この様子だと婚儀をあげてからの有弦と音寧のやりとりが――情事を含めて――双子の姉の綾音に筒抜けだったのだろう。  憮然としつつ、有弦は言い訳するのを諦める。 「あれは――……」 『ふぅん。ぷれい、の一環だったってわけ』 「余計なお世話だ」 『あたしと傑の性交を盗み見していた童貞少年もすこしは成長したってことね』 「……」  綾音に知られていたとは思いもしなかった有弦はうっ、と言葉を詰まらせて苦虫を噛んだ顔になる。
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