1-15. 水底で待ってる。

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「――なにが、どうなっている……?」  いまのままでは何度音寧を抱いて子種を注いでも岩波山の後継ぎは生まれない。  彼女を孕ませるためには綾音が彼女に破魔のちからを返すことが必要。  けれど綾音は既に死んでいる。  ……淫気によってちからを蓄えたという不思議な鏡の魔法は、過去の世界に生きる双子の姉が持ったままでいる本来の破魔のちからをいまの持ち主である音寧へ返すために発動したように思える。だが、彼女はどうやって音寧と接触するつもりなんだ?  有弦がうんともすんとも言わなくなった鏡を片手に呆然としている間に、彼の膝のうえで気を失っていた音寧がゆっくりと瞳をひらいて有弦に微笑みかける。 「あぁ、やっぱり四阿に落としていたのですね……花鳥(はなどり)の鏡」 「花鳥の、鏡?」  むくりと身体を持ち上げて、音寧は有弦の手から鏡を受け取り、恥ずかしそうに頷く。
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