1-16. 時翔る花嫁は初恋の君

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『音寧が桂木のおうちに行く前に暗示をかけておいたの。何か大事なことが起きたときに召喚できる“時を翔る”暗示をね……ちなみにこの花の鏡の真の名はトキワタリ、時間を渡る架け橋となる鏡』  時宮の邸の蔵にあった蒐集録を調べたという綾音によって、不思議な鏡の効能はあっさりとあばかれた。精気を糧に過去・現在・未来を覗くことができる鏡で、ときおり人を喰らって他の時代へ飛ばしてしまうため、時宮の破魔のちからによって封印されていたのだと。  それを知った綾音は、自分の精気を使って鏡を使役しようとしていたらしい。結局彼女ひとりのちからでは鏡の魔力を引き出すことはできず、今日までそのままの状態になっていたというが…… 「ちょっと待て。それならおとねはなぜ」 『鏡が持ち主だと認めたのが、あたしじゃなかったから。それから』  申し訳なさそうな表情を浮かべている音寧のあたまをぽんぽん、と撫でながら綾音は告げる。 『時宮の血を持つ娘は、一生で一度だけ“時を翔る”ことができるの』
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