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綾音に破魔のちからを渡した音寧だったが、それとは別に、“時を翔る”能力を持っていた。けれどもそのちからを発動するためには半神による暗示が不可欠だ。
音寧は、双子の姉である綾音に。
綾音は、双子の妹である音寧に。
互いが生まれた季節である「夏」という単語が鍵となり、召喚の際に媒介となる場所が鍵穴へと変貌する暗示がかけられたのだ。
――大正十二年の「夏」、「水底」で待ってる。
だから音寧はその言葉に乞われるがまま自ら観鏡池へ飛び込み、水底へと沈んでいったのだ――この先に、双子の姉が待っていると理解して。
『まさか過去から鏡を通して召喚されるとは思わなかったって顔ね』
『鏡……そういえば、岩波の邸のお庭の池も観鏡池って』
『だから余計に、魔力が働いたのかもしれないわね』
有弦は時宮の血の恐ろしさを痛感し、空を仰ぐ。
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