2-01. 真夏の朝の再会

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 綾音の暗示によって如月の池のなかへと飛び込み、過去の世界へ召喚された音寧は、冷たい池に沈んだにも関わらず濡れていなかった。服装は洋館の四阿で夫の有弦に愛されたときの長袖のワンピースのままで、当然のことながら下着もつけていない。  召喚された場所には見覚えがあった。ここは時宮邸の蔵のなかだ。はめ殺しの窓から太陽のひかりがのぞいているのを見て、いまが早朝に近い時刻なのだなと音寧は理解する。隣の綾音が夜着を着ていることからも、家族が眠っている間に例の鏡を使って自分と有弦の様子をうかがっていたのだろう。そして綾音は未来から音寧を召喚した。自分がかつて母親の胎のなかで渡されたという破魔のちからを本来の持ち主へ返すために。  何が起こったのか戸惑いを隠さない夫に事情を説明し、綾音が持っていた鏡越しにいったん別れを告げた音寧は自分と瓜二つの顔を持つ双子の姉とともに時宮邸に裏からこっそり入り、彼女の部屋に案内される。 「いまはまだみんな眠っているから大丈夫よ。まずはその着替えをどうにかしましょ」 「……あ」
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