2-01. 真夏の朝の再会

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 有弦に乱されたワンピースをふたたび自分で脱ぎはじめた音寧は、双子の姉の前に裸体を晒しながら困惑している。有弦にさんざん愛された彼女の肌のあちこちに虫刺されのような赤い痕があるのを見て、綾音は納得する。 「……資くんはわかっているのかしら」 「?」 「いつだったか、音寧のことを“姫”って呼んだでしょ?」 「――なんであやねえがそのことを?」  ぎょっとする音寧に、綾音は「やっぱり」と確信して首を振る。  うんうん頷く双子の姉の姿を怪訝そうに見つめれば、彼女は背後にまわって音寧が戸惑っていた着物の帯を素早く結びながら口を開く。 「桂木とね、って名前の十八歳のあなたはまだ、何も知らないで静岡にいるの。あたしに召喚されたのは五代目岩波有弦の妻になった音寧って名前の十九歳のあなた。だけどここではまだ、音寧は結婚していない」 「?」 「五代目有弦になることをここにいる資くんに知らせてはいけない。あなたはあくまで未来の有弦の妻。今の時点では五代目有弦になるのは異母兄の岩波傑。そしてその妻になる予定なのがあたし。それは理解できるでしょう?」 「なんとなく、だけど」
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