2-01. 真夏の朝の再会

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 うたうように告げる姉の言葉を噛み締めながら、音寧は頷く。  たしかに、未来から召喚された自分とこの世界で暮らす自分は別人みたいなものだ。今ここにいる音寧がとねとして堂々と過去を変革させることは望ましくないのだろう。だから綾音は音寧を「姫」と呼び、周囲の人間にもそう説明したのだと当たり前のように呟く。 「だからね、ここでの音寧はあたしより年上の、縁戚のお姫さまってことになっているの。だけどお父様のこともあるし、さすがに時宮の邸に匿うのは難しいから、あとで協力者を紹介するわ」 「協力者?」  これでよし、と帯をきゅっと締めた綾音に姿見まで連れて行かれた音寧は、薄荷色の涼しげな着物を身にまとった自分を前に、無言になる。久しぶりに着物を着たからか、背筋がピンとする。綾音の着物は、自分に誂えたかのようにぴったりで、まるで自分が綾音になってしまったかのような錯覚にさえ陥るほど。 「よかった、大きさぴったりね! 同じ顔だから、同じ着物だとどっちがどっちだかわからなくなりそう」 「……そうですね」
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