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そういえば昔からふたりは色の違う着物を着せられていた。どっちがどっちだか判別できるよう、死んだ母が双子のために縫ってくれたのだ。綾音は赤や桃色などの色合いのものをよく着せられていたけれど、薄荷色のような青みがかった色の着物も着るのかと音寧は鏡に映る自分を見ながらふふ、と微笑む。
「念の為にもあやねえ、って呼ぶのはあたしとふたりきりのときだけにして。あたしも音寧のこと、外では“姫”って呼ぶことにするから」
「だけどわたしが姫って……おかしくないですか」
「おかしくなんかないわよ。岩波の人間に時宮に関わるもうひとりの“姫”の存在を強調しておかないと、あたしが死んだあと、資くんが音寧を花嫁に迎えに来てくれなくなるわよ」
「それは、困ります」
「だからここでは桂木ひめ、とでも名乗ればいいわ。あたしと同じ顔をしているからそう名前を訊ねられるようなこともないと思うけど……ね」
楽しそうにからから笑う綾音を見て、音寧もしょうがないなぁとこくりと頷く。
「わかりました、ここでのわたしは“姫”じゃないといけないんですね」
「そう。そして資くんと初恋をやり直すの……子を授かる未来へと繋げるために」
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