2-02. 未来の夫と過去の顔

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 ぽつり、と頬を赤らめながら零す音寧の弱々しい発言に、綾音は息を呑む。たしかに他人に見られて興奮するという「ぷれい」は存在しているが、まさか目の前の清楚な妹がそのような状況に陥っていたとは……ってこれから陥るのだろうか、この流れでいくと。  音寧もその考えに至ったのか、どうしよう、と表情を青ざめている。いや、どうしようと言われても未来の夫がそう言っていたのだからそういうことをしたんでしょうね、と綾音は苦笑しつつ話題を変える。 「そんなわけで、用意ができたら出かけるわよ」 「え、どこに?」 「あなたを“姫”として匿ってくれる場所」  夜着を脱ぎ捨てて似たような色合いの着物を選んで、綾音は楽しそうに言い放つ。  いつしか遠くで、セミの声が響きはじめていた。
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