2-02. 未来の夫と過去の顔

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「……有弦さまはそんなことしません」 「いまはまだね。ただ、“岩波山の呪い”に蝕まれつづけたら彼も狂ってしまうわ……資くんから聞いた?」 「呪い、みたいなものだとは言ってましたが」 「その現象に対抗できるのは異能持ちだけ。なかでも破魔のちからはそれを祝福へ導くことができる。だから傑は破魔の異能を持つ令嬢を全国から探してあたしを求めてくれた。けれど彼は襲名することなく……“岩波山の呪い”にかからないで死ぬことになるから、否応なしに有弦を継ぐことになった弟の資くんに流れちゃったわけ」 「はぁ」  草履ですたすた歩いていく綾音は涼しい顔をしているが、彼女を追いかける音寧はハァハァと息を切らせている。汗ひとつかかない姉と額から汗を垂れ流す妹、同じ双子でもこうも違うのだなと改めて痛感しながら、音寧は彼女の言葉に耳を傾ける。
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