2-02. 未来の夫と過去の顔

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「彼の呪いを封じるにも、破魔の能力を持たない音寧が相手をしたところで時間稼ぎにしかならない。いままでの岩波山の有弦の妻の多くが後継を産み落として死んだのはなぜ? 岩波山の獰猛な性欲を受け止められなかったから。けれど、初代の姫君、ご隠居である三代目有弦の奥方はその呪いを免れている。ふたりには高貴な生まれ以外にも共通点があったの。それが」 「異能持ち?」 「そう。きっと歴代の有弦はそこまで考えずにたまたま惚れた高貴な女を娶ったんでしょうけど、傑は岩波有弦の妻となった過去の女たちの身元を調べさせて異能の存在に気づいたってわけ」  時を味方につけるという時宮以外にも、この国には隠された異能持ちの一族が点在している。いまでは伝説に近いが江戸後期から明治維新にかけての激動の時代に陰ながら関わっていた元御庭番衆や陰陽師の血統も大雑把にいえば異能が絡む。けれども大正の世に入ってから異能持ちは冷遇、淘汰されるようになっているため、異能の存在を隠しているものの方が多いのが現状だ。時宮の一族のように破魔を利用して成り上がる方が稀なのである。
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