2-02. 未来の夫と過去の顔

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 だから岩波傑は破魔のちからを持つ綾音を妻に求めたのだろうか。でも、どうやって…… 「調べさせた?」 「この国には良くも悪くも未だに異能持ちを警戒して監督している人間たちがいる。音寧も知ってる人間よ、なんせ未来の夫となったひとなんですもの」 「――え」  静岡の茶畑で出逢った際に彼はどんな格好をしていたっけ。  茶商があんな服を着て求婚に来るなんて場違いだと、思わせることもないくらい似合っていたあの装束。濃紺の軍服。 「元、帝国第参陸軍特殊呪術部隊所属、岩波資――彼は時宮邸に一時期密偵として雇われていたの」  彼はここでは退役したばかりの軍人なのだと、綾音は目を白黒させる音寧にいたずらっぽく告げるのだった。
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