2-03. 協力者は花盗人

7/9
前へ
/608ページ
次へ
「あと、姫が綾音に預けた破魔のちからを返してもらうことで、未来の有弦が岩波山の呪いから解放されるであろうことも、ね」  ふふふ、とほくそ笑む傑はそう言いながら綾音を抱き寄せ、見せつけるように音寧へ告げる。 「軍の調査では彼女の存在まで詳細を明らかにすることが叶わなかったが、破魔の能力を扱えるもうひとりの姫君の存在を匂わすことができれば俺と綾音がいなくなっても、岩波山は安泰だろう?」 「そうね。音寧に本来の破魔のちからが戻れば岩波山を悩ませている例の現象……岩波山の呪いにだって勝てるはず」  明るい綾音の声色を前に、音寧はびくりと震える。ふたりは本気で音寧に破魔のちからを返却させ、有弦を襲名したものだけが持つ難儀な呪いを解かせようとしている。けれど綾音が持つ破魔のちからを受け止めるにはこの世界で男の精液を集めて精力を蓄えなくてはいけない。夫となる人間以外の精液でも魔法の媒介にはなるらしいが、できればそれは遠慮したい音寧である。  やはり、この世界の有弦……資と接触し、肉体関係を持つ手段が手っ取り早いのだろう。  などとつらつら考え込んでいた音寧は、綾音の言葉を前に絶句する。
/608ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加