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呼吸を乱しながら鏡を覗き込む音寧を前に、有弦は容赦なく言葉をかける。
『いま、なにをしているんだい?』
「着物の袂を膝まで捲りあげて、太ももに自分の手を当てて、います」
『下着はつけていないんだよね。付け根に向けて指を伸ばしてごらん』
「は、はい……」
綾音が貸してくれたトキワタリの鏡を片手に、音寧は大正十四年で待っている夫と会話をしていた。はじめのうちは互いに姿を認めることができていたが、音寧の精力が枯渇しているからか、鏡のなかにあった淫の気が薄れたからか、鏡面が曇り、途中から相手の表情が見えなくなってしまったのだ。
会話をつづけるためには鏡に淫の気を吸わせなくてはならない。そのことを綾音に知らされていた有弦は過去に翔んだ自分の嫁に自慰を命じた。
「んっ……」
『可愛い声だ。鏡が曇ってしまって残念だよ』
「ゆ、げんさま……」
有弦の声かけに合わせて自分の身体にふれていた音寧は、だんだんと大胆な気持ちになって自分の敏感な部分へと指先を遊ばせていく。和毛の茂みの先でおとなしくしていた花芽は、ふだんよりもちいさい、けれども絶妙な刺激を受けて嬉しそうに膨らみはじめていた。
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