2-04. 鏡越しの逢瀬

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 綾音に問答無用でここにしばらく宿泊しろと言われた音寧は目を丸くするしかなかった。どうやら傑が異能持ちの時宮の縁戚の姫君として第参陸軍に匿ってもらうよう金のちからで申請した結果らしい。軍の上層部を黙らせた上で、退役したばかりの異母弟を護衛役に座らせたのも傑だという。食事は住み込みの管理人夫妻が準備してくれるし、身体を清めるための浴室と備え付けの衣装部屋(ワードローブ)まで室内に付随している。その上、衣装部屋には綾音が用意させたという彼女と同じサイズの色とりどりの服が掛けられていた。どうやら着せ替え遊びに興じたい双子の姉が我が儘を言ったらしい。 「着物はもちろんだけど、せっかくだから流行りの洋装にも挑戦したいわね。音寧に銀座のテーラーで作ってもらったドレスを着せてみたいわ。資くんは清楚なワンピースの方がお好きかしら。あと、寝るときはこっちにある夜着か浴衣を着て……彼を誘うなら夜着(ネグリジェ)の方がいいかもね」 「あやねえさまってば!」
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