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桂木の人間とつきあいのあった時宮の遠戚が届けてくれた黒ずんだ鏡だけが、音寧の手元に残された。時宮邸の焼け跡から見つけ出されたという女物の手鏡は、在りし日の綾音が使っていたものなのだろう。形見だからと紐を通していまも肌身はなさず持ち歩いている。
齢十八で生命の華を散らした綾音は、令嬢から茶農家の娘になった十九の音寧を見て、どう思うだろう。
岩波有弦の風変わりな求婚は、二十歳になったら結婚について考えないといけないわね、と養親に言われた矢先のことだった――……
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