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達したことでふたたび顔を見ることが叶った音寧は安堵の表情を浮かべて彼の声に耳を傾ける。
軍の庇護を得た彼女の護衛に就いたのは事実だと、鏡の向こうで告げた有弦は、申し訳なさそうに妻の名を呼ぶ。
『おとね』
「なんですか、有弦さま」
『……綾音嬢からはなしをきいているというのなら、俺が第参陸軍で何をしていたのかも知ってしまったのだな』
「精液を提供された、というのは……」
『……上層部の命令に従ったまでだ。彼女にはどれが誰のものか知らされないまま、容器にいれたものを渡し、摂取させた。彼女はそれが異能持ちの宿命だからとおとなしく飲み、破魔のちからを自分のものとするために訓練していたが……俺には軍に利用された実験動物のようにしか見えなかった』
「精液を、飲む?」
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