2-04. 鏡越しの逢瀬

10/11
前へ
/608ページ
次へ
『当時十五歳の少女にいきなりたくさんの男を咥えさせることはできないだろ。身体のなかに取り込むことで魔力の媒介にすることが可能だから、飲むという行為が一番安全だったんだろう。綾音嬢の父君と軍のあいだでなんらかの取引があったんだろうが、俺はそこまで知らない』  有弦の「男を咥えさせる」という発言に衝撃を受けつつも、音寧はそうですか、と弱々しく頷く。 『時宮邸に密偵として雇われていたのはほんの半年だ。軍の人間は俺が彼女の婚約者候補に選ばれたと思ったんだろうし、俺もあえてそれを否定しなかった。でも、真実は別にある』 「傑さまのことですか」 『……おとね、こんなことを言うのは気が引けるが。傑には気をつけろよ』 「気をつける?」  仲の良い異母兄弟だと言っていたのに、気をつけろとは、どういうことだろう。  疑問を顔に出す音寧に向けて、有弦は苦笑する。
/608ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加