2-05. 岩波資という名の男

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「貴女が懇意にしている綾音嬢を悪くは言いたくないのだが、彼女には時をも味方にするというおおきな“破魔”の、おおきすぎるちからがあったからね」  悪しきものを浄化させる、良きものを引き寄せる、時をも味方につける……得体のしれない異能のなかでも特に厄介なのが破魔のちからである。  明治維新以降、海外から多くの人間や物が行き来するようになったこともあり、帝国古来の悪しきものだけでない、外つ国から来訪した得体のしれない魔の存在が顕著になった。そこで設立されたのが第参陸軍特殊呪術部隊だ。  和の悪しきもの(・・)と西洋の()のことを併せて魔もの(・・・)……魔物と呼び、狩ること、滅すること、封じることをはじめ、異能を持つ国民の保護観察を極秘に行う陸軍のなかでも公にされることのない組織だと説明され、音寧は首を傾げる。 「あの。あやね、さんが持つ破魔のちからは、生まれつきのものですよね? おおきすぎるってどういう……?」
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