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音寧の護衛についた資は昼夜問わず無言で彼女の傍に控えている。
就寝時に部屋のなかに入ってくることはないのだが、常に扉の傍で仁王立ちしている彼を見ていると申し訳ない気持ちに陥ってしまう。
双子の姉の綾音だったらきっとわがまま言って出逢った当日の夜から彼を部屋に招いて誘惑して、颯爽と目的を果たしているのではなかろうか……
けれども自分から彼を誘惑して、過去の夫を襲うことなど恥ずかしくてできないと音寧は深く思い悩んでいた。
「……有弦さま」
『おとね? あれから何か動きでもあったのかい?』
音寧が過去へ翔んで既に三日が経過している。この日は迎賓館に遊びに来た綾音と一日中衣装部屋のなかで着せ替え遊びに戯れてしまった。早く綾音の破魔のちからを返却できるよう精力を集めないといけないのに、こんなことしていいのかと心配そうにする音寧に、これも彼をその気にさせるための作戦だと説き伏せられて、結局姉の着せ替え人形になってしまった音寧である。
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