2-06. 露見する秘蜜

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 綾音が来ている間も資は部屋の扉の前でじっとしていた。相変わらずつまらない男ね、と笑う綾音とつまらなくて結構ですと言い切る資のやりとりを見て、音寧は思わず「おふたりは仲がよろしいのですね」と棘を持った言い方をしてしまった。綾音に「もしかして嫉妬した?」と資の前で暴露されて「そんなわけないじゃないですか!」と逃げ出してしまったのだが、肯定と捉えられてしまったらしく彼女が帰ってから資に「俺なんかに嫉妬しないでくださいね」と扉の向こうから声をかけられてしまった。穴があったら入りたい心境である。  ――けれどそんなこといちいち有弦さまに報告する必要もないですよね……どうしよう何をお話しましょう。  手元のトキワタリの鏡に思わず声をかけてしまった音寧は、すぐさま未来で待つ愛するひとの声が返ってきたことに驚き、姿が見えないことに愕然とする。 『おや、可愛い妻の姿が見えないな……ひとりで自分を慰めていないのかい』 「そ、そのようなことできるわけないじゃないですか!」 『だけどこうして鏡に声をかけてくれたってことは、俺の顔を見たいんだろう?』 「う……」
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