2-06. 露見する秘蜜

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 だが扉の向こうには資が護衛として寝ずの番をしている。自分がここで自慰をして、あられもない声をあげてしまったら…… 『そっちではどのくらい時間が経ったんだい?』 「今日が、三日目の夜になります。昨日、資さまとお会いしました」 『そうか……おとね、いま貴女が着ている夜着を教えてくれるかい』  唐突に問われて目をまるくする音寧だが、有弦に訊かれるがまま身にまとっている夜着の説明をする。  綾音に着せ替え人形にさせられて、今夜はこれを着て寝るのよと言われたのだ。袖のない意匠が特徴的な、パウダーブルーと呼ばれる紫陽花の花色のような淡い色合いが重なり合うつるりとした布地のナイトドレスで、どことなく中華風の民族衣装を彷彿させる。いまは素肌の上に一枚だけの心もとない姿だが、露出度は有弦が西ヶ原の洋館で用意していたものよりも低く、夜着というよりもこのまま紗を羽織って舞踏会へ繰り出せそうな上品なもののように思える。 『――そうか、紫陽花の花のドレスなんだね』 「はい」 『見たいな』 「え、でも資さまが」 『資なら気づかないよ。鏡に見せつけるように、俺に気持ちいい顔を見せて?』 「……はい」
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