2-07. 淫魔に魅入られた姫君

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   * * * 「イっ……ああぁああっ!?」  ――どうして、資さまが!?  鏡の向こうで有弦に命じられるがまま、絶頂を迎えたあとも両手の動きを止めずにいた音寧は、自慰に夢中になってしまったがゆえにおおきな声を出してしまったのかと慌てて口を手で塞ぐ。  が、すでに彼はしっかりと音寧の淫らな姿を目撃しており、彼女の反応を気にするそぶりもない。 「……なんということだ」 「た、資さま?」 「姫……貴女は淫魔に魅入られていたのだな」  寝台でぐったりしていた全裸同然の音寧にふわりと敷布をかけながら、資は複雑そうな表情で気の毒そうに呟く。彼の手にはいつの間にかトキワタリの鏡が握られている。 「淫魔……?」 「この鏡が、貴女をいやらしい気持ちにさせている。鏡の向こうに“淫”の気配を求める魔物が潜んでいるんだ。なぜこのような危ないモノを……」 「その鏡は、あやね、さんの……返してくださいっ」 「そうか。綾音嬢の忘れ物か。彼女ならこの鏡の魔を封じることもできるだろう。わかった、俺から返しておく」 「そんな」
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