2-08. 禊で暴かれる身体

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 あどけない寝顔を見ていると先ほどまで資の手で恥じらいながら感じ入っていたのが嘘みたいだ。ようやく払魔の手袋を外した資は自分の手で、おそるおそる彼女の濡れた髪を撫で、微笑を浮かべる。  淫の気配はすっかり鳴りを潜めていたが、油断は禁物だ。ふだんなら魔を払った手袋が黒く変色するが、彼女の蜜に濡れた手袋は白いままで魔を払った形跡がないからだ。禊で一時期に悪しきモノが隠れただけで、内部に潜んでいる可能性が高い。彼女がはじめから魔に犯されていないことなど思いもよらない資は、きっとそうに違いないと悔しそうに唇を噛む。  そのうえ、資の下半身はいまも勃起したまま彼を翻弄させている。これは任務だと言っておきながら姫の痴態に興奮していた自分の分身の素直な反応に戸惑いながら、資はなおもふれたい欲を押し殺して、彼女の寝顔から顔を反らす。 「……綾音嬢や傑はこのことを知っていたってこと、だよな」  自慰をしながら岩波山の有弦の名を恋しそうに求めて叫んでいた彼女の蕩けるような表情を思い出し、資は嗤う。  資に愛撫されながら達したときに許しを乞うように口にしたのも自分ではない、あの男の名だった。
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