2-08. 禊で暴かれる身体

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 岩波山の呪いは男児が生まれたことで落ち着いたと思っていたが、そうではなかったのかもしれない。そのことに気づいた傑と綾音が彼女を迎賓館に匿い、自分を傍に置いたのだろうか……  四代目有弦が異能持ちの姫君を囲ったとされるのは傑が綾音との結婚を強行しようとしているからだろう。あろうことか愛息子は自分が宛がおうとした女に見向きもせず異能などという得体の知れないちからを持つ旧公家華族の麗しき令嬢を盗み出してきたのだから。息子にできて自分にできないわけがないと、きっとその程度のことで、彼は綾音の遠い親戚だという姫に目をつけ、奪ったに違いない。  ――けれど、彼女の護衛をはじめて二日、それらしき追手の姿はない。 「もしや……棄てられたのか?」  傑への意趣返しに異能持ちの姫君を囲ったものの、思い通りにちからに肖ることができなかったからか。それとも自分たちの母親のように抱き殺しかねない状況に気づいて手を引いたのか。
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