2-08. 禊で暴かれる身体

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 どちらも資の想像でしかないから、まったく違う事情があるのかもしれない。けれど、姫が求めるように有弦の名を口にしていたこと、異母兄と綾音が彼女を匿うために軍にかけあってこのような舞台を整えたこと、あろうことか四代目有弦の罪の子である自分に彼女の護衛を任せたことが、資を落ち着かない気持ちにさせている。  ――ひと夏の間と、彼女は言っていた。その夏が過ぎたら、どうなるのだろう。  来月には時宮家と岩波家の、綾音と傑の結納が行われる。親族一同が会する場に、姫も参加するために帝都入りしたと考える方が自然だが、一連の事象からそれだけではない何かがあると資は悟る。  まるで出口の見えない迷路だなと、資はため息をつく。  どっちにしろ、傑とは一度しっかり話し合う必要があるだろう。実家に戻るのは気が引けるが、父親と姫の関係も確かめたい。もし、岩波山の呪いに巻き込まれているのだとしたら、資の手で彼女を救いたい。  せめてひと夏などと言わないで、ずっと傍にいることを許してくれるのなら……そこまで考えて、資は愕然とする。  この気持ちはなんだ? 彼女はただの、護衛対象でしかないのに。
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